生物種のレベルでの多様性の最も基本的な尺度の一つは種類数であり、そのほか必要に応じて、多様度指数や優占種への集中度・衡平性などが多様性の評価に用いられる12)。さらにこのような多様性の指標だけではその中味がよく分からないことから、種類数や個体数に加えて、汚染の指標種など特定の生物種の個体数や食性類型ごとの組成比など生態学的な要素を勘案しながら総合的に評価する指標(Index of Biotic Integrityなど)が提案され、米国の流水域などに適用されている13)。これは幾つかの評価項目について3段階の得点を与えそれを集計して総合点を出す方式のもので、評価の客観性などには問題が残る。最近、わが国でも河川域の魚類の生息環境評価にこの指標を適用する試みがなされているが14)、このような観点に立った本格的な沿岸環境評価はまだほとんど行われていない。
Fig. 5. Year to year changes in the number of species of coastal fauna collected at the see shore stations in and around Kure Bay, Hiroshima from 1960-1990. (From Yuasa and Fujioka, 1995)